その人事聴聞会は5月9日に開かれた。だが共に民主党議員たちは拍子抜けするほど弱弱しかった。彼らの質問は事実確認さえできていない水準のものばかりで、終始落ち着いた態度で隙のない答弁をした韓氏をむしろ引き立たせることに一役買った。人事聴聞会以後、韓氏は次世代有力政治家に急浮上し、彼の任命に対する国民の賛成意見が10%も上昇、国民世論は圧倒的な賛成に傾いた。
これを受けて17日、尹錫悦大統領は国会同意なしに韓氏を法務部長官に任命した。共に民主党は直ちに、韓長官を「法曹ソシオパス(反社会性パーソナリティー障害)」と糾弾し、尹大統領には「ルビコン川を越えた」として猛反発している。韓長官に対しては解任建議案を提出する予定だという。
前政権が残した病巣にメスが入るのは時間の問題
共に民主党の議員たちは、韓長官の任命が文在寅政権に対する捜査につながる可能性があるという恐怖に震えている。韓東勲長官は国会の人事聴聞会で「誰を問わず、罪があるとすれば処罰されなければならず、罪を隠すことはできない」と主張し、就任演説でも「社会的強者に対しても厳正な捜査ができる公正なシステムをつくる」と明らかにした。韓国メディアは、「文在寅政権と関連された捜査を向けた発言」と分析している。
韓長官は、まず、就任翌日、秋美愛元法務部長官が廃止した「証券犯罪合同捜査団」を再発足させた。文在寅政権と関連した各種金融事件に対する捜査に弾みがつくというシグナルだ。
文在寅政権時代に、捜査が中途半端になっていた事件は山ほどある。
姜琪正(カン・ギジョン)大統領府首席、李洛淵(イ・ナギョン)元共に民主党代表などの有力者の名前が多数あがった「ライム/オプティマスファンド事件」(私募ファンドであるライムやオプティマスの2兆ウォン台の投資詐欺事件)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団の柳時敏理事長が関係者として言及された「シンラジェン事件」(バイオベンチャーのシンラジェンが虚偽情報で株価上昇を図って上場廃止となった事件)、「ウリドュル病院の融資事件」(ウリドュル病院が1400億ウォン台の銀行融資を受けた過程に楊正哲(ヤン・ジョンチョル)などの文在寅派閥の政治家たちが関わっているという疑惑)などが、捜査対象になると取りざたされている。