(3)揺るがなかった消費者の信頼

 中国の消費者がラッキンコーヒーへの信頼感を失わなかったことも大きいでしょう。ナスダック上場廃止や粉飾決算などは会社経営の視点や投資家目線からは大打撃ですが、多くの消費者にとっては、ラッキンコーヒーから離れる理由となりませんでした。若いサラリーマンや学生などにとって、ラッキンコーヒーは安価にコーヒーを楽しめる確固としたブランドになっているのです。

 ただし、ラッキンコーヒーがコーヒー業界で安泰な地位にあるわけではありません。中国コーヒー業界2番手であるスターバックスも再度店舗数の拡大を行っており、2022年内に6000店舗達成を目指しています(次のグラフ)。

中国国内のコーヒー店舗数(「全国城市4月咖啡行情分析—门店总量&新开门店数量&潜力排名」の数値を基に筆者作成)

 さらに異業種からの参入も続いています。カジュアルウェアやスポーツウェアを中国伝統文化風にアレンジしている「Lining」(李宁)は自社ブランドでコーヒー事業を開始しています。中国の郵政事業を手掛ける「中国郵政」は、郵便局と喫茶店を融合させた店舗を実験的に開始しました。

 調査会社のiiMedia Researchによると、コーヒー業界の市場規模は2021年で3817億元、2025年には1兆元に達すると予測しています。今後も市場拡大にともない、企業間の競争はさらに激しくなりそうです。

差別化が求められるミルクティー業界

 中国ではコーヒーとともにポピュラーな飲み物として、ミルクティー(奶茶)があります。