周文偉はかって台湾の大学助教授

 事件後、地元メディアや台湾メディアによって明らかにされた事件の全容はこうだ。

 容疑者は教会の信者によってその場で取り押さえられた。現場では拳銃2丁と弾薬の入った袋や火炎瓶が見つかった。容疑者の車からは書き残したメモやスマートフォンも見つかった。

 地元警察は逮捕したデイビッド・ウェンウェイ・チュウ(周文偉=68)が「中国と台湾の政治的緊張に怒りを募らせていた」と明らかにした。

 FBIは、ヘイトクライムとして捜査を始めた。

 事件発生時、教会にいた30人以上のほとんどが高齢の台湾系米国人だったが、台湾国籍の永住者もいたという。死亡したのは56歳の医師で、容疑者を取り押さえようとして銃弾3発を浴びて即死した。

 周文偉容疑者は国府軍に中国から強制的に台湾に移住させられた中国人の息子として台湾に生まれた。中国大陸から来た「新参者」だったということで幼年時、台湾人にひどい仕打ちを受けたという。

 ところが周文偉の半生をたどってみると、移民2世の落伍者ではなさそうなのだ。大学の教壇に立ったこともあるインテリだ。

 渡米後、米国でどのような教育を受けたかデータはないが、2020年前後、台湾新竹県新山の中華技術学院(現在、中華科技大学)助教授として観光業・飲食管理・航空サービス管理を教えていたことが判明している。

 事実、周文偉容疑者は周辺では「元大学教授」と語っていた。台湾出身なのに見事な北京語を喋っていたという。

 在米の台湾系作家、ミシェル・クオ氏は、「ラスベガスに住みながら容疑者が過激な行動に出るようになった背景にはインターネットを通じた全世界に繋がる中華民族のネットワークからの情報があったのではないか」と見ている。

 私生活を辿って見ると、きわめて地味に見える。