第2部:対独戦勝記念軍事パレード

プーチン大統領絶頂期の対独戦勝60周年記念パレード(2005年5月9日)

 筆者は毎年モスクワ「赤の広場」の軍事パレードを観ておりますが、一番印象深い軍事パレードは、プーチン大統領絶頂期の2005年5月9日の対独戦勝60周年記念軍事パレードでした。

 V.プーチン大統領代行(当時47歳)は2000年5月7日に新生ロシア連邦として2人目の新大統領に就任後、欧米との接近を試みて、NATO(北大西洋条約機構)加盟まで検討しました。

 当時は欧米との関係が良好で、対独戦勝60周年となる2005年5月9日の軍事パレードにはプーチン大統領夫妻が出席。小雨降る中、実に53カ国の元首と国連・ユネスコ・EU首脳らが参加。日本からは小泉純一郎首相が参列しました。

 モスクワ赤の広場の特設会場最前列には、プーチン大統領夫妻に向かって右側に米ブッシュ大統領夫妻と中国の胡錦涛主席が、左側に仏シラク大統領と独シュレーダー首相夫妻が座っていました。

 プーチン大統領とブッシュ大統領は隣り合って座り、2人で仲良く会話している様子が実況中継で放映されておりました。

 ロシアの最高級車ジルのオープンカーに乗った背広姿のセルゲイ・イワノフ国防相(KGB新入局員当時のプーチン氏の同郷・同期)が、国防軍最高司令官であるプーチン大統領に記念式典の準備が整った旨を報告後、プーチン大統領が記念式典開催を宣言。

 軍事パレード冒頭は「ロシア国旗」と「勝利の旗」の入場行進。その後軍楽隊が続き、軍事パレードが始まりました。

 軍事パレードは、基本的にはいつもこの順番(国防相報告~大統領訓示~旗入場~軍楽隊演奏~軍事パレード開始)になります。

 余談ですが、セルゲイ・イワノフ国防相は文民として初めての国防相です。彼は中将ですが、国防軍中将ではなく、KGB中将です(プーチンは凡庸なKGB要員で、中佐で予備役編入)。

 2005年の軍事パレードは3部に分かれていました。

 最初に、1945年当時の軍服を着たソ連赤軍が軍種ごとに行進。

 ソ連邦国歌と軍歌の流れる中、ベルリン攻略戦に参加した白ロシア第8親衛軍の行進には、軍楽隊はなんと≪カチューシャ≫を演奏。

 日本では≪カチューシャ≫というと、ほぼすべての日本人はロマンス・恋の歌と思っておりますが、実はこの歌は軍歌、正確に言えば戦時歌謡曲です。

 次が、大祖国戦争に従軍した退役軍人2600人が130輌の特設車に乗り、プーチン大統領の前を行進。最後のパレードが現役軍人の軍事パレードになりました。

 国防軍の陸・海(海軍歩兵と水兵)・戦略ロケット軍・宇宙軍、国内軍(内務省→のちの国家親衛軍の母体)のジェルジンスキー師団、国境警備隊、各士官学校、軍事アカデミーなどのすべての軍種が参加して行進。最後は、空軍の軍用機が赤の広場の上空を通過しました。

 余談ですが、国境警備隊はソ連邦時代はKGB傘下、現在は連邦保安庁(FSB)所属です。しかし元を辿れば、エカテリーナ2世が創設した軍種であり、赤軍よりも歴史の古い由緒ある軍隊です。

 ロシア(ソ連)に入国するときにパスポート検査があり、緑の肩章をつけた軍人がパスポートを検査します。これが国境警備隊です。相手はプロの軍人ですから、笑顔やサービスを期待する方が間違っています。

 しかし時々ハッとするような美人がいることがあり、これが唯一の救いでした。パスポート窓口に美女軍団を勤務させれば、ロシアのイメージは相当アップしたかもしれませんね?