金正恩氏の笑顔は偽りだったようだ(写真:AP/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 2018年から2019年にかけては、北朝鮮問題が大きく動いた時期だった。主だったものとして、以下が挙げられる。

・2018年4月:第3回南北首脳会談(板門店 平和の家)
・2018年5月:第4回南北首脳会談(板門店 統一閣)
・2018年6月:第1回米朝首脳会談(シンガポール)
・2018年9月:第5回南北首脳会談(朝鮮労働党中央委員会本部庁 百花園迎賓館)
・2019年2月:第2回米朝首脳会談(ベトナム・ハノイ)交渉決裂
・2019年6月:米朝首脳会談(板門店)両国首脳会談としていない

 トランプ大統領(当時)が史上初めて米大統領として北朝鮮のトップと会談し、一気に米朝関係が改善した。世界はこの様子を見守り、朝鮮半島の非核化に期待を膨らませた。

 あれから3年が過ぎ、米国はトランプ政権からバイデン政権へと変わった。韓国もあと1カ月すれば文在寅(ムン・ジェイン)大統領は退任し、政権が交代することになっている。

 そんな中、4月8日に韓国メディアが2018年にやり取りされたトランプ大統領と金正恩国務委員長(当時、以下、金委員長で統一)の親書の内容を一斉に報じた。時事ジャーナルが単独で報じたもので、その他メディアが引用報道している。

 元となった記事をご紹介する前に、まずは引用報道した韓国メディアの記事の内容からご紹介したいと思う。

 韓国メディアのほとんどが下記の内容を引用報道した。

(1)金委員長がトランプ大統領と2度にわたって米朝首脳会談を行う過程で、文在寅大統領に対する不満を提起し、排除を要求した

(2018年9月21日 金正恩からの親書)
・今後、朝鮮半島非核化問題は文大統領がともにするのではなく、閣下(トランプ大統領)と私が直接議論することを希望する
・我々の問題に文大統領が見せる過度な関心は不要
・多くの人が現状と両国間の非核化論議などに懐疑的だが、閣下(トランプ大統領)に対する私の確信と尊敬は絶対に変わらない

(2)親書を送付する3日前の9月18日から2泊3日で平壌を訪問した文大統領と第3回南北首脳会談を行い「戦争のない韓半島」と「韓半島非核化」を骨子とした合意文を発表するも、金委員長は文大統領を除く議論を要求した

 これだけでも金委員長がいかに文大統領を煙たがっていたのかがよく分かる。