文在寅一派に対する風当たりは強まる一方だ。左は大統領選で敗北した李在明候補(写真:ロイター/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 春らしさが深まりつつある韓国。新型コロナの感染拡大が落ち着いているとは言えないが、ウィズコロナを見据えた動きが出始めている。国政の方も、大統領戦が終わり、来月には尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が第20代大統領として就任する。

 尹氏に対する期待と不安が交錯する中で、ある動きが注目されている。それは、文在寅政権で恩恵を受けてきた人やその家族に対する処罰が始まったことだ。「魔女狩り」のような雰囲気を呈している。

 その一人が、文在寅大統領の信頼を一身に受けていた曹国(チョ・グク)氏である。

 2019年9月に法相に就任した曹氏は、長身の甘いマスクに加えて、名門ソウル大学出身で、母校でも教授として教鞭を執っていたという「絵に描いたようなエリート」だ。女性や文氏支持者からも高い人気を誇った。

 文政権の中でも目玉となる人事だったが、その後、スキャンダルによって辞任の憂き目に遭った。自身はもとより、妻と子どもを巻き込んだ数々の不正疑惑が浮上したのだ。

 不正の内容は、韓国人が最も嫌う「不正入学」に関連したものだ。

 曹氏の長女は、韓国の名門大学である高麗大学の卒業後、釜山大学大学院医学部に進学し、医師国家試験に合格、卒業した。ただ、高麗大と釜山大学大学院に入学した際の書類の偽造など、選考に当たって疑わしい過程があったという疑惑が浮上した。この件に関しては、曹氏の妻で、大学教授のチョン・ギョンシム氏が関わったのではないかとささやかれた。

 曹氏の長男についても同様だ。米国で生まれた長男は、韓国と米国の二重国籍を保持する。長男は兵役への入営期間を5回にわたって延期させており、それについて米国籍を利用した兵役逃れではないかという指摘が出たが、曹氏は「学業の多忙によるものだ」とこれを否定している。

 曹氏の実弟についても、学校経営に事務局長として関わる中、教員の選考過程で、出願者の親から現金を受け取り、選考の口利きをした疑いが出ている。

 こうした一連のスキャンダルは「曹国事態」と呼ばれ、文政権や曹氏に反発する保守系団体や学生たちが、曹氏の辞任と長女の入学・在学に対する適切な対応を求めるデモを繰り広げた。国民の反響は大きく、文氏の支持率低下にもつながった。