バイデン氏「プーチン氏を権力の座にとどまらせてはいけない」
「この男を権力の座にとどまらせてはいけない」と3月26日にワルシャワでプーチン氏を指弾したジョー・バイデン米大統領の発言をどうみるのか、ジャイルズ氏に尋ねた。「バイデン氏が台本にない発言をする新たな一例に過ぎない。考え抜いたわけではなく、その場で飛び出したアドリブだ。西側メディアは政策を示唆する発言のように取り上げたが、実際にはそのように受け取られることも考えていない、ただの思いつきかもしれない」と言う。
「バイデン氏は米大統領というより1人の人間として発言したと思う。問題はバイデン氏が発言したとたん、米政府によって政策ではないと打ち消されなければならないことだ」(ジャイルズ氏)。レジームチェンジ(体制転換)は幻想だ。プーチン氏がいなくなれば、ロシアは生まれ変わるという考えは甘過ぎる。プーチン氏はロシアであり、ロシアはプーチン氏なのだ。プーチン氏が消えてもプーチン2.0がすぐに現れるだけだ。
ジャイルズ氏は昨年9月、「ロシアを抑止するもの」と題する報告書を発表している。ロシアに侵略を思いとどまらせた過去の成功例と失敗例を詳細に調査した結果、驚くべき一貫性が浮き彫りになったという。ロシアは敵対国が脅威に直面して後退した場合には成功を収めるが、同じ敵対国が自分自身や同盟国、パートナーを守る強固な意志と決意を示した場合には後退してしまうのである。
ロシアは占領下または支配下にある領域を拡大することで自国の安定と安全を追求してきた。バルト海の飛び地領カリーニングラードのように、黒海沿岸を守る軍事拠点にクリミア半島を変貌させたのも、この欲求を強く反映している。もう一つのパターンは大きな抵抗に遭遇した時、引き揚げる用意があることだ。革命家ウラジーミル・レーニンは「銃剣で探り、粥を見つけたら突き進み、鋼鉄にぶつかったら撤退だ」という言葉を残している。
スヴェン・ミクセル元エストニア国防相は「プーチン氏にとって、弱さは強さよりも挑発的である。われわれの弱さで誰かを誘惑してはならない」との懸念を示している。弱さはプーチン氏を挑発する。停戦や和平合意に向け、またぞろ西側ではプーチン氏に対する宥和主義が頭をもたげている。ジャイルズ氏は「ウクライナにおけるプーチン氏の野望を抑えるのは完全な軍事的失敗だけだ」と断言している。