初めての猟で、自分自身では獲物を獲ることはできなかったが、獲れるとも思っていなかったので特にガッカリはしなかった。仲間の撃ったエゾ鹿を解体する時に脚を持って開いたり、皮を剥いだりという作業も興味深かった。
首を落とし、胸を開いて内臓を出す。足先を切り落とし、ナイフで皮を剝いでいく。「肉」になっていく最初の過程。さっきまで生きていたエゾ鹿の内臓は湯気が出ていてまだまだ温かい。血の匂いを嗅ぎ付けたカラスやキタキツネが集まってくる。
新鮮な内臓に食らいつく「タヌキ」
二度目か三度目の猟でエゾ鹿を獲った時に、解体している後ろで「フガフガ」と獣が何かを食べている音が聞こえ、振り返ると狸・・・らしき動物が、肉塊から取り除いて端に寄せておいた内臓にがっついていた。
思わず「うわっ狸! 内臓食べてる~!!」とそのビジュアルのグロさに叫んだが、「バカ、ありゃキタキツネだ」と“総裁”(事実上の仲間内のリーダー。「金玉堂総裁」と名乗り、周囲にもそう呼ぶよう強要)に一蹴された。冬なのにあの太り具合は、内臓を食べ慣れていたに違いない。キツネが太ると狸に見えるのは新発見だった。
北海道観光のアイドル的存在のキタキツネ。「きゃ~かわいい!!」と若いお嬢さんからおばさま方に人気であるが、血で濡れた真っ赤な口で内臓を食べ続ける姿を見てもかわいいと言えるのだろうか。ちなみに道民にとってはエキノコックスという人獣共通寄生虫を媒介する害獣に他ならないそうだ。