中谷昇(元インターポール・サイバーセキュリティ総局長)
現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が世界中で注目されている。デジタル時代の現在では、こうした紛争に関連したサイバー攻撃が同時並行的に行われることが珍しくなくなってきた。
2月23日、政府はウクライナ東部の一部地域の独立を承認したロシアへの経済制裁を発表した。同日、経済産業省や金融庁は経済制裁の報復としてロシアからサイバー攻撃が行われる可能性があると国内企業に対して警告を出した。実際、2月28日にはトヨタ自動車が関連会社へのサイバー攻撃の影響で、3月1日には国内の工場を停止する事態が発生した。
サイバー警察局設置は日本警察の歴史における要石
こうした国内企業へのサイバー攻撃に対しては、捜査当局が重大な関心を持って情報収集、分析を行っていることは間違いない。特に筆者の出身元である警察庁は、2022年4月に「サイバー警察局」を設置する予定になっており、以前にも増して国際情勢などに起因して国家に脅威を与えるサイバー攻撃の動向には注意を払っていると思われる。
サイバー警察局の創設は、今年1月28日に正式に閣議決定された警察法改正案の目玉でもある。新設のサイバー警察局は、同じく4月に関東管区局に拠点を置く「サイバー特別捜査隊」を発足させる。サイバー特別捜査隊は、2022年度中に全国の警察から集めた約200人の態勢を整えることになり、サイバー捜査を専門とする“実動部隊”となる。
サイバー警察局の設置は、戦後の日本警察の歴史において非常に重要なマイルストーンになると思う。本稿では、筆者が元警察官僚として、また、元インターポール幹部としての経験を踏まえて、サイバー警察局が設置される重要性について考察したい。