北朝鮮や中国、ロシアが長距離弾道ミサイルの開発に邁進している。それに対し、日本もミサイルで敵基地を攻撃できる能力を保有すべきとの声が一部で高まり、国会やメディアでの議論が始まった。元駐中国防衛駐在官、笹川平和財団上席研究員の小原凡司さんは、日本が独自開発の国産ミサイルを配備することの必要性を早くから提言してきた。その真意をうかがった。(吉田 典史:ジャーナリスト)
◎前回の小原氏インタビュー記事
「中国の本心、米国を恐れつつも台湾と尖閣はあきらめない」
「拒否的抑止」のための能力が必要
──日本が敵基地攻撃能力を保有すべきかどうか、小原さんはどうお考えですか。
小原凡司氏(以下、敬称略) まず、私は「敵基地攻撃能力」という言葉は誤解を招きやすいので使わないようにしています。代わりに「敵のミサイル攻撃阻止能力」と呼んでいます。日本へのミサイル攻撃をさせないための能力であり、「拒否的抑止」の一部としての能力という位置づけです。
敵基地攻撃能力は「懲罰的抑止」、つまり、攻撃を受けたら反撃する、時には敵の攻撃以上の攻撃を加えることを意味すると話す軍事専門家がいますが、私はそれとは違う立場です。敵が攻撃をしようと思っても、それはできない、効果が得られないのだということをあらかじめ示すことに意味があり、それを「拒否的抑止」と捉えています。
──なぜ、日本にミサイル攻撃をさせないためにミサイルが必要なのでしょうか?