(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
2022年1月北朝鮮は計7回、11発のミサイルを発射させた。金正日総書記の死去に伴い、2011年12月に金正恩氏が朝鮮人民軍の最高司令官に就任して以来、月間で最多である。既に、昨年1年間の発射回数(8回、10発)を超えた。
中でも、1月30日に発射した「火星12型 中距離弾道ミサイル」は、射程距離が4500から5500キロメートルに達するとみられており、米領グアムをも射程圏内に含む。
北朝鮮の国営メディアは、「火星12型の発射は“検収射撃試験(大量生産後に実践配備されたミサイルを無作為に選んで品質を検証すること)”であった」と伝えている。これが虚偽でなければ、北朝鮮は同様のミサイルを複数機保有していることになる。これは日本にとっても他人事ではない。
グテーレス国連事務総長は2月1日に、「今回のミサイル発射は北朝鮮が2018年に宣言したモラトリアムの破棄であり、明白な安保理決議違反に該当する」と声明を発表した。“モラトリアム”とは核実験と大陸間弾道ミサイルの試験発射猶予(一時停止)のこと。北朝鮮は2018年4月に、朝鮮労働党中央委員会の総会で豊渓里(プンゲリ)核実験場廃棄とモラトリアムを宣言していた。
北朝鮮によるミサイル発射を快く思わない人は、グテーレス国連事務総長の声明に同調したことだろう。しかし、同胞のよしみか、従北姿勢を貫く韓国・文在寅大統領の反応は異なった。
文在寅大統領によれば、北朝鮮による相次ぐミサイル発射や火星12型の発射はモラトリアム宣言破棄ではないという。韓国の中央日報も、「北朝鮮の試験発射は中距離弾道ミサイルに準ずる射程距離を持つミサイルであるため、モラトリアム破棄に至ったものではないとみたようだ」と文在寅大統領の発言を解説した。