1月15日、刺傷事件があった東大前で現場検証に当たる捜査員たち(写真:ロイター/アフロ)

 大学入学共通テストの初日だった今月15日の朝、試験会場の東京大学の前で、受験生の男女高校生2人と72歳の男性が刺された事件から1週間が過ぎた。

 一生を左右するような大学入学試験の会場で受験生が襲われるという事件は前代未聞で、それだけに衝撃でもあったが、それ以上に驚かされたことは、その場で殺人未遂の容疑で現行犯逮捕されたのが名古屋市の名門私立高校に通う高校生だったことだ。しかも受験に臨む3年生ではなく2年生だった。

「医者になるため東大を目指して勉強していたが、1年前から成績が落ち自信をなくしていた」

「医者になれないなら、人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと考えた」

 報道によると、逮捕直後に少年はそう供述していたという。

コロナによる分断と孤立が事件を引き起こしたのか?

 その事件の翌日の16日。少年の通う高校は早くもいわゆる「謝罪コメント」を出している。以下にその全文を示す。

〈本校在籍生徒が事件に関わり、受験生の皆さん、保護者・学校関係者の皆さんにご心配をおかけしたことについて、学校としてお詫びします。

 本校は、もとより勉学だけが学校生活のすべてではないというメッセージを、授業の場のみならず、さまざまな自主活動を通じて、発信してきました。また本校の長い歴史のなかで、そのような校風を培ってきました。ところが、昨今のコロナ禍のなかで、学校行事の大部分が中止となったこともあり、学校からメッセージが届かず、正反対の受け止めをしている生徒がいることがわかりました。これは私たち教職員にとっても反省すべき点です。「密」をつくるなという社会風潮のなかで、個々の生徒が分断され、そのなかで孤立感を深めている生徒が存在しているのかもしれません。今回の事件も、事件に関わった本校生徒の身勝手な言動は、孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされたものと思われます。今後の私たちの課題は、そのような生徒にどのように手を差し伸べていくかということであり、それが根本的な再発防止策であると考えます。〉

 コロナ禍による分断と孤立が、事件を引き起こした原因のように記されている。

 だが、果たしてそうだろうか。私には新型コロナウイルスに責任を転嫁して、事件の本質を誤魔化しているようにしか思えない。