(立花 志音:在韓ライター)
12月24日のクリスマスイブの朝、韓国の朴槿恵前大統領が恩赦で釈放されるというニュースが流れた。想定内ではあったが、さすがに開いた口が塞がらなかった。これは誰が見ても選挙対策だろう。
文政権は、いわゆる徴用工訴訟問題で、日韓基本条約に反した判決を下した韓国の司法判断に対して、「三権分立」を理由に政府は介入できないと主張してきた。ただ、今回の恩赦は介入じゃなければ何だというのか。
朝からモヤモヤが止まらなくて、息子の意見を聞いてみた。
「だいたい大韓民国の法なんて意味ないよね。自分の国の大統領が気に入らないって勝手に降ろして、監獄に入れといて、今さら出てもいいよなんてさ。この国の上の人たちってろくなこと考えてないじゃん。次の大統領候補で信用できる人だって誰もいないし。バトンタッチして文在寅が(監獄に)入ればいいんだよ」
中学最後の試験も終わり、進学校も決まり、卒業までゲーム三昧の息子も安定の辛口である。
読者の皆さんもご存じの通り、朴槿恵前大統領は国民によって弾劾され、失職した。最終的に収賄、公務上秘密漏洩、職権乱用など18件もの罪に問われ、懲役22年の実刑判決が下された。当時はほとんどの国民が大統領を非難し、感情的になってその判決が妥当だとした。それを、こんなに簡単に恩赦の一言でひっくり返すことができてしまうのだ。
この国の大統領の権力の強さに改めて驚嘆する。そして、保守系最大野党「国民の力」の李俊錫代表は、釈放が決まった朴槿恵前大統領に対して、「何らかの形で国民に謝罪の意を表してほしい」と発言した。恩赦とはいえ、罪を償って出てくる人に向かって、また謝罪を要求するのか。
彼はハーバード大学を卒業した秀才で討論にも強いが、司法的なバランスは持ち合わせていないようだ。