(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国国防大学の元政治委員で解放軍きっての理論家、しかも中共元老、元国家主席の李先念の娘婿という紅二代(共産党の元高級幹部の子弟)のサラブレッドでもある劉亜洲(りゅうあしゅう)上将が逮捕された、という噂がネットを駆け巡っている。

 いわゆるゴシップ情報であり今すぐに確認が取れるものではないのだが、2022年秋に予定される第20回党大会前のこのタイミングでは、見過ごせない話である。その信ぴょう性や背景について考えたい。

汚職の罪で拘留?

 きっかけは12月19日、ニューヨーク在住の中国人作家、卒汝諧がブログ上で北京の関係者から“劉亜洲と弟の劉亜偉の2人が同時に逮捕された”と聞いたと書き込んだことだった。卒汝諧は次のように書いていた。

《今朝、北京の兄貴分(消息筋)の一人から電話があって、劉亜洲が北京で、その弟の劉亜偉が広州で同時に拘束されたという。私が「どういうことなのか? こんなタイミングで劉亜洲が何かしでかしたというのか」と聞くと、兄貴は「劉亜洲は自分を過大視しており、眼中に誰も映っていない。だから習近平本尊を根本的に馬鹿にしていた。それが様々な反動的言論の中に常に散見されていた」と言う。

 劉亜洲は公然と、すべての中国指導者の道徳水準は一般人より低い、などと言っていた。ある人が、あなたの岳父(妻の父)である李先念もそうなのか? と尋ねると、劉亜洲は「私はすべての中央指導者、と言ったのだ」と冷ややかに笑ったという。・・・李先念のメンツは役に立たなかったのか、と問うと、兄貴は笑って「北京官僚の現実はそんなものさ。死んだ李先念のメンツなど、生きている豊台区の書記にも劣るのさ」と言った。