第一回WBC、北京五輪など日本代表としても活躍した里崎智也(写真:アフロ)

プロ野球、オフシーズンの風物詩「契約更改」は、そのほとんどが終わった。野球選手にとって、年俸は評価と一体であり多くの注目を集めるが、選手がそれを公に口にすることは多くない。

そんな中で、「お金が大事だ」と言い切る元プロ野球選手がいる。2006年のワールドベースボールクラシックで正捕手として「世界一」を支え、その名を知らしめた里崎智也だ。

里崎はいま、野球界で屈指の人気を誇る「YouTubeチャンネル」を運営することでも注目を集める。そんな里崎のユニークな「思考法」をまとめた一冊が面白い。スポーツライターの田口元義氏が紹介する。

「早く試合に出られるチーム」を選ぶ

 人生で最も大切なものは何か?

 元プロ野球選手の里崎智也氏は新著『シンプル思考』(集英社新書)で、「お金」だと潔く綴っている。

“世の中、「お金」に対して肯定的に捉えている人ばかりではありません。「金を稼げればそれでいいのか」「お金よりも大事なものがある」。たしかにそうです。そういった概念をひっくるめて、僕にとってはお金が一番大事。ある程度のものが買える。生活が保障される。すなわち、より多くの不幸を回避できることとなります”

 里崎氏は千葉ロッテマリーンズの選手として16年間プレー。新刊ではその間に稼いだ額は約13億円であると本書で公表している。現在ではスポーツ紙での評論、プロ野球中継の解説に、チャンネル登録者数約50万人のユーチューバーとしても活動。

 プロ野球選手という肩書きだけで生きていけない時代に、セカンドキャリアでも成功を収めらた理由。里崎氏の思考にこそ大きなヒントであると気づかせてくれる。

 本書のタイトルでもあるように、里崎氏は「物事をシンプルに考えたほうがいい」と読者に助言し、自らの実体験を惜しげもなく伝えてくれている。なかでも興味深いのがロッテに入団した経緯だ。

 里崎氏がプロ野球選手となった1998年当時は、有望選手が自由に行きたい球団を決められる「逆指名」制度があった(1球団あたり2名まで)。

 その契約には球団と選手が相思相愛であることが前提ではあるが、氏が読売ジャイアンツ(巨人)や阪神タイガースといった人気チームではなくロッテを選んだのは、「早く試合に出られるから」。

 すなわち、お金を稼げる可能性が高かったからだ。