日本ハムの新庄剛志監督。写真は2003年7月、ニューヨーク・メッツ傘下(当時)のノーフォーク・タイズ時代のもの(写真:Thomas Anderson/アフロ)

 結局、本質的には何も変わっていないのだろうか。北海道日本ハムファイターズで不可解な人事発表があり、波紋を広げている。

 今月20日、前日本ハム監督で今オフに野球日本代表・侍ジャパン新監督となった栗山英樹氏が2022年シーズンから「プロフェッサー」という新設ポストに就任することが決まったと発表された。この新設ポストは2023年に球団の新たな本拠地となる「北海道ボールパーク F ビレッジ」の開業を控え“世界がまだ見ぬボールパーク”でプレーするにふさわしい選手づくり、チームづくりを推進していくことを目的として設けられたという。

新庄体制に水を差すことにならないか

 球団側の説明によれば、来季から栗山氏はプロフェッサー(教授)として野球人としての人間形成をつかさどる役割を担い、選手を対象として定期的に講義を行っていくことになるようだ。

 ただ、ネットやSNS上の反応、そして球界関係者の間でも栗山氏の同職就任には首をかしげる人が少なくない。

 日本ハムは新庄剛志監督を新たに招へいし、リスタートを切る姿勢を見せたばかりだ。にもかかわらず、つい先日退任したはずの前監督・栗山氏を再び要職に就かせ、新庄体制と共存を図っていこうというのだから正直に言わせてもらえば、かなり無理がある。華々しく船出を切った新庄体制に水を差しかねない。

今季限りで日本ハムファイターズの監督を退任した栗山英樹氏が、来季からは「プロフェッサー」に就任する。写真は2016年11月撮影のもの(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 10年間に渡って日本ハムで監督を務め、日本一1度、リーグ優勝も2度達成した栗山氏は間違いなくファイターズの功労者だ。何らかのポジションを用意しようという球団側の意図は伺えるとはいえ、これではせっかく新庄監督を招へいしたにもかかわらず逆にチーム運営が円滑に機能しなくなる恐れも出て来る。

 新庄監督も前監督の栗山氏に全く気を遣わないわけがない。現在明らかにされているプロフェッサーの職務内容は選手たちへの講義活動がメインとなっているようだが、その場で栗山氏は一体どのような話をするのか――。指揮官就任以来、自らが目指すカラーにチームの方向性を変えていこうと心血を注いでいる新庄監督にとっても栗山氏の講義内容は非常に気がかりだろう。講義の場において自分の考えとは相反する“栗山カラー”で知らず知らずのうちに選手たちが染め上げられていくことにでもなったら、さすがの新庄監督も黙ってはいられなくなるに違いない。

「新庄監督」はイメージ刷新の切り札だったはず

 もともと今オフ、新庄監督の招聘に関しては水面下で日本ハムの親会社・営業サイドから猛プッシュがあったとささやかれている。10年間の長期政権でマンネリ感も生じ、近年低迷続きだった栗山体制下においては2021年シーズン、球団全体のイメージダウンにつながるような大問題が頻発していたこともあったからだ。

 同僚選手への暴力問題で出場停止処分となった中田翔内野手が8月末、巨人に電撃移籍。また、4月11日に球団の公式ツイッターで公開された試合前の動画では選手たちの円陣の中で声出しを行ったアフリカ系の父親を持つ万波中正外野手へ「日サロ行き過ぎだろ、お前」と肌の色を冒涜するようなチームメートからの暴言が入っていたため批判が殺到し、この投稿を球団側は削除していた。