サムスン電子を訪問し李在鎔副会長と握手する文在寅大統領(右、写真:ロイター/アフロ)

 2021年も師走になり、韓国では来春にある大統領選に向けて、2大政党は大統領候補を決めて選挙活動に乗り出した。

 正直、今回も共に民主党になるのは勘弁してほしいと願っている。なぜ、そう思うのか。

 文在寅氏が大統領になってからは、とても住みづらいと感じるのはコロナ禍だからとか経済が行き詰っているとかだけの問題ではない。

 サムスンの本社前を通るたびに見かける横断幕には「お金にとち狂った李健煕(イ・ゴンヒ)・李在鎔(イ・ジェヨン)」とある。

 毎日のように本社前でデモを続ける人たちが掲げたものである。

 ここでいうイ・ゴンヒはサムスン会長で、すでに故人となっている。会長に対して腹立たしいことがあるにせよ、酷い書き方である。

 イ・ゴンヒ会長が私腹を肥やしたいがためにしたとしても、半導体で世界1、2位を争うまでにサムスンを育て、世界に誇れる大企業にしたことは認めてもいいはずなのにと思ってしまう。

 これに比べて、セクハラ容疑をかけられた瞬間に自殺してしまった前ソウル市長や家族の贈賄疑惑で飛び降り自殺した元大統領に対しては、英雄扱いで立派な死を遂げたかのような扱いを平気でする人たち。

 サムスンの前に横断幕をかけた人と黒いスキャンダルで自殺した人たちを祭り上げる人たちが異なる人であったとしても、それを黙って見過ごさなければならないということがとても気持ち悪い。

 この息苦しさは、文在寅大統領が絶大な人気を誇っていることに由来する。