在りし日の日産自動車座間工場。1995年に30年の歴史に幕を下ろした(写真:AP/アフロ)

 神奈川県中部に位置する座間市。人口13万人ほどの小さな自治体だが、ある取り組みで全国的な注目を集めている。それは、生活困窮者支援だ。この20年、日本をむしばんできた格差と貧困の拡大は新型コロナによって加速している。その中で、座間市は何をしているのか。こちら座間市・生活援護課の第2話「断らない生活支援」について。(篠原匡:編集者・ジャーナリスト)

第1話「「引きこもり」10年選手」から読む(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67707)

 神奈川県中部に位置する座間市は、東京や横浜に通う人々が住む、人口13万人のベッドタウンである。米軍キャンプと日産自動車座間工場が街の代表だったが、1995年に座間工場は閉鎖され、イオンモールに姿を変えている。そんな地域の誇りは、今やボクシング世界王者、井上尚弥といったところだろうか。

 だが、マスコミでの露出はほとんどないものの、「福祉」の世界で全国的に注目を集めているのが、生活援護課が進めるプロジェクトだ。

写真は同工場の主力車種だった日産を代表する名車サニー(写真:Fujifotos/アフロ)
座間が生んだ世界チャンピオン、井上尚弥(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)

「断らない相談支援」

 一見、不可能なミッションに思える。だが、その「理想」に向けて、市役所を中心に、地域が動き始めている。

 始まりは、2015年に施行された生活困窮者自立支援法。この法律に対応するため、座間市は従来の生活保護に加えて、自立支援や子供の学習支援、就労支援などの担当を新たに設置した。その狙いは、生活が苦しくなる前に、早めの住民支援に乗り出して生活困窮を減らすこと。自立支援法が謳う「断らない相談支援」を、文字通り愚直に推し進める。

 その立役者が、生活援護課の課長を務める林星一だ。2006年に生活援護課のケースワーカーとして座間市役所に来て以降、一貫して困窮者支援を続ける。生活困窮者自立支援法が施行されるタイミングで自立サポート担当になった林は、2019年から課長として同課を率いる。

 丸刈りで、物腰の柔らかい雰囲気をまとっているが、ひとたび社会福祉について語り始めると、熱い想いがほとばしる。

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