日本企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)でどのように変われるのか――。
月極駐車場のDXという新しい分野を切り開いてきたハッチ・ワークの大竹啓裕会長が「DXの現場訪問」と題し、今話題となっている「企業経営者」にインタビューする新シリーズ。
今回は、不動産業界に特化したクラウドサービス『ESいい物件One』を提供する「いい生活」(東証第2部上場企業、https://www.e-seikatsu.info/aboutUs/profile.html)を取り上げます。
不動産物件情報管理データベースを軸に、全国の不動産業を営む法人に向けて業務効率化を推進する同社のCOO(最高執行責任者)北澤弘貴(きたざわ・ひろよし)さんにお話を聞きました。
いい生活の創業メンバー4人が、ウォール・ストリートを代表する企業の一つであるゴールドマンサックス(以下、GS)出身という部分にも興味を惹かれました。
金融業界に暮らす人にとって垂涎の的ともいえるGSの肩書を棄ててまで、不動産業界のIT化という泥沼になぜ飛び込んだのか?
不動産業界という巨大産業にもDXの波は訪れています。しかし、その実態はメディアが騒ぐ華やかなDX成功とはかけ離れた現実もあります。
今回は、なぜ不動産管理業界のIT化が遅れたのかを明らかにすることから、上手くいくDXのヒントを見つけたいと思います。
業界に先駆けてDXを推進してきた中で、数々の壁と向き合ってきた北澤さんには、今のDXはどう映るのか。
金融エリートの立場を捨てて転身した理由とは?
大学卒業してすぐにGSに入社しました。もともと独立志向があって「世界を見られる」「経営者との接点」「独立資金の確保」を念頭に選んだ結果でした。
配属された先は米国株式市場などの分野。
当時、ソ連崩壊によって冷戦が終わり、軍事技術が民間に解禁。
米シリンバレーなどで、インターネットをはじめGPSなどの技術を活用したビジネスが急拡大するのを目の当たりにしました。
米国の最先端情報を持つGSには様々な相談が寄せられるなか「他人のビジネスを手伝っている場合じゃない、自分たちでもやりたい」と。
まだサービス内容は固まっていませんでしたが、同じくネットビジネスの立ち上げを考えていたGSの同僚3人と一緒に創業しました。
しかし、現実はそうそう甘いものではありませんでした。