(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)
およそ860万匹のペットが飼われている韓国では、愛玩犬の調教師が人気の職業となっている。愛玩犬の訓練は難しいことは難しいが、要領を得れば、本職の調教師にも劣らないほど飼い慣らすことができる。
その必須要領は3つだ。
(1)反復動作により、「いけない!」ということを徹底的に洗脳する
(2)切実なこと(餌)で操る
(3)言うことを聞かなければ、怖がらせる
私が、愛玩犬訓練を冗長に語ったのは、それが適切な比喩なのかは分からないが、北朝鮮にあまりにも簡単に飼い慣らされている大統領府の実状が、本当に情けなく感じているためだ。
端的な例として、10月21日、国会国防委員会の総合監査で、外交部、統一部、国防部の各長官が、みな一斉に北朝鮮の新型潜水艦発射弾道ミサイルは「挑発ではない」と口をそろえたことを挙げよう。
ソ・ウク国防部長官は、21日に開催された国会国防委員会の総合国政監査で、北朝鮮のSLBMなどが「安保挑発」であるという韓国第一野党「国民の力」のカン・テシク議員の指摘に対して、すぐに「用語を少し分けて使うが、北朝鮮の威嚇だとみられる」として、「挑発というものは、私たちの領空、領土、領海に被害を及ぼすことで、国民に被害を及ぼすこと」と答えた。
チョン・ウィヨン外交部長官も、この日、国会外交統一委員会の総合国政監査で、中道系野党「国民の党」のイ・テギュ議員が発した「北朝鮮のSLBM発射は、戦略的挑発か?」という質問に、「戦略的挑発に対する明白な基準は、『韓半島の全般的な安保状況に非常に深刻な影響を及ぼしかねないか』という点をもって判断すること」と述べた。
即答はしなかったが、北朝鮮の今回のSLBM試験発射が「戦略的挑発」の基準には達し得ないという趣旨と解釈された。
イ・イニョン統一部長官も、外交通商委国政監査で、北朝鮮がSLBMなど引きつづきミサイル発射実験をしていることに対して、「北朝鮮が、なぜ核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射しないのか。それは、決定的破局は望んでいないということだ」と述べた。同時に「他の側面では、対話を模索しているように見受けられる」と評価した。
このように、国会議員が執拗な質問攻勢をかけても、3長官の口から出てこなかった言葉は「挑発」である。実際には北朝鮮による挑発と見る方が自然だと思うが、3長官が「挑発」というと、何か不都合があるのだろうか。それほどまでに恐ろしい禁句なのだろうか。
あたかも「ダメ!」という言葉の意味を訓練された子犬が、「ダメ!」という言葉を聞きたくないのとそっくりではないか。まるで子犬の訓練さながらである。