「ペクデガリ(白あたま)」とは、オートバイに乗っている交通保安員(交通巡査)を指す言葉だ。白いオートバイに乗り、白いヘルメットで取り締まることから「白い頭」を意味するペクデガリと名付けられた。
しかし、単に白いヘルメットだけをかぶっているから付けられた名前ではない。交通保安員たちの振る舞いと権勢が天を突くほど高いことから付けられた名でもある。金日成の直系は「白頭(ペクトゥ)血統」と呼ばれており、「白あたま」もここに由来している。ペクデガリの権勢は果たしてどの程度だろうか。
(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)
(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
北朝鮮で自動車などの車両を取り締まる権限を持つペクデガリの生活水準は、普通の幹部に劣らない。他国と比べて車両台数が少ない北朝鮮で、自動車はカネに直結する。貨物トラックであれ、バスであれ、乗用車であれ、車両の需要は高く動かすだけでカネを生む。
ペクデガリは、そういった金の生る木を取り締まる。
平壌市交通地区隊所属のペクデガリは、朝の取り締まりの際に、オートバイにガソリンを入れずに出動する。国が取り締まり用のガソリンを供給しないからだ。そのため、彼らの日課はオートバイに給油するための取り締まりから始まる。
最初の取り締まりは自家用車だ。日本から帰国した同胞やその子供、国外に親戚がいる人々の一般自家用車を取り締まるのだ。政府がスポーツ選手や芸術家に贈った贈答自家用車もあるが、オーナーはカネがないので取り締まることはない。
一般自家用車のオーナーは国外の親戚から送られてきた外貨を使う人たちで、彼らを取り締まり、ガソリンや軽油の購買券を得る。購買券は、1枚15リットルで、ガソリンは北朝鮮貨で15万ウォン、軽油は8万ウォン程度の価値がある。一般労働者の月給3000ウォンで計算すると、ガソリンは50カ月、軽油は27カ月の給与に相当する。
そこで、交通規定違反の名目で、自家用車のオーナーにガソリン券を要求する。交通法規を違反しているかどうかは重要ではない。ペクデガリが違反だといえば違反になるし、飲酒運転だといえば飲酒運転になる。道路の監視カメラや飲酒測定取器(ねずみ取り)が整備されていない北朝鮮ではペクデガリの判断と嗅覚で違反かどうかが決まるのだ。