北朝鮮の国家功労者は既に有名無実化している(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮の国家功労者報勲制度は、法律的には、他の国の制度と比べてかなりよくできている。もっとも、ソ連をはじめ東欧社会主義国家が崩壊するまではいい制度だったが、北朝鮮経済が暴落に暴落を繰り返した今、報勲制度は有名無実化している。現在の北朝鮮の国家功労者報勲制度はどのような姿なのだろうか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時
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(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮の国家功労者は、金日成とともに日本と戦った抗日革命闘士、独立に際して英雄的な偉勲を立てた祖国解放戦争烈士、韓国と日本をはじめ海外で北朝鮮のために工作を行った隠れた英雄、戦後復興建設と社会主義を建設する過程で偉勲を立てた英雄、軍事服務過程で負傷した栄誉軍人たちである。

 北朝鮮国家功労者は本人に加えて、家族も好待遇を受けることになっている。北朝鮮憲法第76条に、「革命闘士と革命烈士家族、社会主義愛国烈士家族、人民軍後方家族、傷痍軍人は国家と社会から特別な保護を受ける」と明記されている。

 北朝鮮の国家功労者報勲制度は、1980年代後半までまともに運用されていたが、経済状況が悪化の一途を辿った1990年代初期から有名無実化している。

 以前は、政府から肉と魚、油と砂糖、タバコと酒、ビールといった基本的な食料品などが毎月定期的に供給されたが、物資不足となった今、革命の第1世代と呼ばれる抗日革命闘士に一部支給されているだけで、他の功労者たちは久しく食料品の供給を受けていない。

 金日成とともに抗日武装闘争をした革命第1世代で生きている人々はほとんどいないので、北朝鮮の国家功労者に対する食料品特別供給制度は事実上、消滅したと見ていいだろう。

 反面、国家功労者の子女に対する特別教育制度は今でも続いている。例えば、功労者の子供たちは大学に入学する前に、万景台(マンギョンデ)革命学院や南浦(ナムポ)革命学院、姜磐石革命家遺児学院などで、一般家庭の子供とは異なる特別教育を受けられる。北朝鮮の国家功労者である親を継ぐ、忠実な核心勢力に育てるためである。

 北朝鮮の国家功労者のための報勲制度の中で、教育は現在でも残っている唯一の制度といってよい。

北朝鮮で開催された全国老兵大会に参加したお年寄り。彼らは朝鮮戦争を戦った元軍人だが、貢献に見合うリターンが不足している(写真:AP/アフロ)