(鵜飼 秀徳:作家、正覚寺住職、大正大学招聘教授)
2023年のNHK大河ドラマの主人公は、徳川家康(「どうする家康」主演・松本潤)である。
これまでNHK大河ドラマは計62作品(2023年放送予定作品まで)放送されているが、家康が主人公を飾るのは40年ぶり3回目。主人公(複数主人公も含む)としては、大石内蔵助と並んで最多となる。
ちなみに、主人公登用2回は平清盛、源義経、織田信長、豊臣秀吉、坂本龍馬、西郷隆盛である。こうしてみると時代の変革期の中心にいた武勇が多い。このうち、敵対勢力に討たれた(自害を含む)のは8人中5人。時代のゲームチェンジャーになるのも命懸けである。
さて、NHK大河ドラマでは、主役俳優や関係者が収録前に主人公の墓参りをするのが慣例となっている。例えば、明智光秀を取り上げた2020年の『麒麟がくる』では、光秀を演じた俳優の長谷川博己らが菩提寺、西教寺(滋賀県大津市、天台真盛宗)に墓参に訪れた。
その実、山崎の合戦の後、竹藪の中で暗殺された光秀の遺体の埋葬先は、判然としない。西教寺には、自然石でできた光秀の供養塔が一族の墓所の中に置かれている。
供養塔に刻まれている光秀の戒名は「秀岳宗光大禅定門」だ。大名クラスの武将の戒名の場合、「院殿」+「大居士」となることが多い。庶民にも付与される「禅定門」になったのは、菩提寺側が権力に忖度したからかもしれない。
光秀の墓所は他にも、京都市東山区や、京都府亀岡市の谷性寺に首塚がある。光秀が討たれた京都市山科区の「明智藪」の近くには、胴体を埋葬したと伝わる胴塚など複数が残されている。いずれの墓も、光秀の知名度の割には小規模である。
では、戦国時代における「三英傑」の墓はどのようなものだろう。三英傑とは織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康の3人である。