2022年5月に行われるフィリピンの大統領選に、元大統領である故フェルディナンド・マルコス氏の長男、フェルディナンド・マルコス・ジュニア(通称ボンボン・マルコス)元上院議員が正式に出馬した。
かつてフィリピンに独裁政権を築き、改革派将校によるクーデターと民主化運動で失脚したマルコス元大統領は、イメルダ夫人の贅沢な生活ぶりも相まって、日本でもあまりいいイメージは持たれていない。ところがその長男ボンボン・マルコス氏は現在、世論調査でも極めて高い人気を集めているのだ。
マルコス元大統領の実家のあるルソン島北イロコス州で州知事を務め、同州選出の上院議員を務めるなどボンボン・マルコス氏は父親の地盤を引き継ぎ同州では圧倒的な支持がある。それに加えて「マルコス元大統領」の知名度もある。いまや全国的に若年層を中心に支持が広がっている。
中高年層にはいまも「マルコス政権」のネガティブイメージが強いが
9月に世論調査会社「パルスアジア」が実施した大統領候補に関する調査では、ドゥテルテ大統領の長女で、ミンダナオ島ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長が20%でトップに立ち、次いでボンボン・マルコス氏が15%と2番目の人気となっているのだ。首都圏マニラではボンボン・マルコス氏の支持は28%、地盤であるルソン地方でも20%と、サラ市長を抑えて一番人気となった。
サラ市長が大統領選に出馬していない現状では、世論調査で二番手に付けているボンボン・マルコス氏が実質的な人気No1候補となっているのだ。このため地元紙でも「今大統領選の投票が行われればボンボン・マルコス氏が当選する可能性が高い」(インクワイアラー紙ネット版10月18日)と報じている。
だが、フィリピンの人々の中にあったはずの「マルコス大統領」に対するネガティブな感情はもう消え去ってしまったのだろうか。