(譚 璐美:作家)
9月20日、中国の不動産最大手の恒大集団(エバーグランデ・グループ)が資金繰りに行き詰まり、世界の金融市場が大きく揺れた。1996年設立の恒大集団は、今や負債総額が約3050億ドルにのぼり、今年末にかけての複数の社債利払いが履行できるかどうか不安視されている。10月4日には、中堅開発業者の花様年控股集団(ファンタジー・ホールディングス・グループ)が、満期を迎えた2億600万ドル(約230億円)の外貨建て社債の支払いを履行できなかった。
西側国では、「いよいよ中国経済の崩壊が始まった」と見る向きが多いが、これはやや短絡的すぎる見方かも知れない。中国のことは、政治的観点から全体像を把握しなければ真相がわからない。経済より政治を優先させる国だということを、まず肝に銘じるべきだろう。
不動産開発事業の失敗は地方政府の責任に
リーマン・ショック以後、中国政府は借金による巨額の景気刺激策を発動し、その後数年間、加熱する投資と与信の拡大が、中国経済をけん引してきた。けん引役の中心にあったのが旺盛な不動産市場だった。中国の不動産は国有であるため、「決して弾けないバブル」という神話が生まれて、いざとなれば国家が助けてくれると、誰もが楽観視していた。
だがここ数年、中国の投資収益は急落し、GDPの伸び率も失速した。不動産ブームは住宅価格を押し上げ、社会格差を広げた。同時に官僚の汚職が増え、治安も悪化した。そしてコロナ禍で、
中国政府は不動産バブルを制御しようと、「三条紅線(3つのレッドライン)」の規制を導入して、不動産開発業者の債務に制限を課した。恒大集団の短期資金が回らなくなったのも、それが原因だ。目下、経営危機に見舞われている不動産会社は、10社以上あるとされる。