同大統領はこの演説で、米国の外交政策の柱だったはずの中国の不当な言動への批判はほとんど述べず、中国の国名も挙げなかった。中国を念頭においたと思われる部分では「冷戦は求めない」と述べ、「私たちの(中国との)共同の未来では新型コロナウイルス、気候変動、貿易、サイバーテロ、国際テロ防止などが課題になる」と語り、米中間の協力分野を強調した。

 さらに同大統領は、世界での人権弾圧などの問題を提起するなかで、ベラルーシ、キューバ、ミャンマー、シリア、ベネズエラなどの国名をあげる一方、人権弾圧の明白な中国の名をあえて指摘しなかった。

 中国への配慮がにじむバイデン大統領のこの国連演説に対しては、連邦議会の上院で中国問題を積極的に提起している共和党のティム・スコット議員らが、「バイデン大統領は明らかに中国へのスタンスを軟化させた」として非難した。

国防費の実質的削減で低下する対中抑止力

 第三は、バイデン政権の国防費の事実上の削減が中国の軍事攻勢を招く結果となっているという議会や学界からの批判である。

 バイデン政権がトランプ前政権とは対照的に、中国の軍事力大増強への警戒を表明しながらも国防費を実質的に削減しようとしていることに対しては、共和党だけでなく、中国の軍事動向の研究者たちからも懸念が表明されてきた。

 この点について下院軍事委員会の有力メンバーのマイク・ギャラファー議員(共和党)は10月上旬、「ワシントン・ポスト」への寄稿で、現在の国防総省の軍事政策では中国への軍事抑止は効かなくなるという趣旨を主張した。ギャラファー議員はバイデン政権の軍事軽視が中国への抑止の弱化を引き起こしていると指摘する。具体的には、バイデン政権の国防費の事実上の削減が、非核の通常戦力面で中国の優位を許し、中国にトランプ前政権時代よりも大胆で果敢な軍事攻勢を招く結果になったと、述べていた。