7月30日、変異株の猛威によって緊急事態宣言に4府県を追加することを発表する菅義偉首相。東京五輪では、大会開催の功績により橋本聖子組織委会長、小池百合子東京都知事とともにIOCから功労賞を受賞した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 東京オリンピックが終わった。そして、東京をはじめ日本には新型コロナウイルス感染患者が溢れた。

 7月23日に開幕した東京オリンピックは、大会期間中に国内の新規感染者が急増。28日に東京都の新規感染者がはじめて3000人を超えると、31日には4000人を突破。8月5日には過去最高の5042人を記録して以降は4000人を下回ることがない。首都圏としても同様の増加傾向を示し、全国的にも増加に歯止めがかからない。

すでに事実上の医療崩壊

 こうした状況を受けて、政府は8月2日から埼玉、千葉、神奈川、大阪に緊急事態宣言を発出。オリンピック開幕前から発出中の東京、沖縄の期限を31日まで延長する。それでも過去にない感染者数の増加に、政府は8月3日に入院対象者を重症及び重症化のリスクが高い患者に限定し、あとは自宅療養とする方針を打ち出した。それだと、肺炎の症状を引き起こし呼吸困難な中等症の患者も、自宅に留まって療養することになる。

 さすがにこれには反発が相次ぐ。与党内からも批判が噴出すると、政府はすぐさま「中等症患者で酸素投与が必要な者」「投与が必要でなくても重症化リスクがある者」を優先的に入院させる重点対象として加えたほか、菅義偉首相が「症状が悪くなったらすぐに入院できる体制をつくる」と表明して、修正に躍起になった。

 そもそも、感染爆発による医療崩壊は入院対象となる重症者、中等症の患者が医療ベッドを埋め尽くしてしまうことにある。そこから中等症を除外してしまおうというのだから、「医療崩壊は起きていない」という言い訳にはなっても、事実上の医療崩壊に達したことを裏付けている。

 それどころか、感染患者が増えたからこれまでと同じ手厚い治療は受けられませんよ、と断言したことにかわりなく、いままでの感染対策が功を奏さず、政府としての責任を放棄したに等しい。

 なぜ、このようなことになったのか。