磨き抜かれた技術と身体を競うアスリートと、それらを発揮するための「メンタル」。トップアスリートはどのようにメンタルを捉えているのか。元サッカー日本代表で、ドイツ・ブンデスリーガの名門シャルケ04などで活躍した内田篤人の考え方がユニークだ。
アスリートとメンタルについて、発売以来、話題を呼ぶ内田篤人・著『ウチダメンタル』(幻冬舎)からご紹介する。
泣きながらピッチを走った日の話
ドラマのワンシーンみたいに真っ暗なピッチを走り続けたことがある。異国の地・ドイツ、練習終わり、誰もいない練習場......、電気が消えるなか、白線の上を淡々と走った。
30分くらいだったかな。雨が降っていて、僕は泣いていた、実は。
ね、なんかカッコ良くない(笑)?
この話、テレビ番組の『情熱大陸』でもしたから、知っている人も多いかもしれない。鹿島アントラーズからシャルケ04に移籍して2年目を迎えた僕は、試合に出られないでいた。2012年のことだ。
1年目はほとんどすべての試合に出て、チャンピオンズリーグにも出場できた。ベスト4という快挙(自分で言うなって言われそうだけど、本当にこれはすごいことなのよ、マジで)まで経験させてもらった。おまけといっちゃ失礼なんだけど、ブンデスリーガ公式HP(英語版)のユーザー投票で年間ベスト11にも選ばれた。
それが2年目を迎え、まるで反転したような状況に陥った。
要因は「監督交代とケガ」。それが一般的な見方だったと思う。
監督は、1年目から起用してくれた(フェリックス・)マガトがその年の3月に解任されると残りのシーズンを(ラルフ・)ラングニックが務めた。チャンピオンズリーグベスト4をともに戦ったのも彼だ。2年目もチームを率いるはずだったんだけど、重圧があったのかバーンアウト(燃えつき)症候群にかかってしまって9月末に退任した。やってきたのは、ステファン(フーブ・ステフェンス)だった。