(英エコノミスト誌 2021年7月31日号)

Bricsの時代は早くも過去のものになってしまった

改善のカギは経済開放の継続にある。

 21世紀の初め、途上国からは限りない楽観と強い野心が湧き出ていた。ところが今日、南アフリカは暴動で揺れている。

 コロンビアは暴力的な抗議行動に悩まされ、チュニジアは憲政の危機に直面している。非自由主義的な政権が勢いを増している。

 ペルーでは先日、マルクス主義者が大統領に宣誓就任しており、ブラジルやインド、メキシコでは独立機関が攻撃を受けている。

 こうした政情不安と権威主義の波は、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の反映でもある。

 この感染症は、腐敗した官僚組織から破れた社会的セーフティーネット(安全網)に至るまで様々な弱点をあぶり出し、つけ入るからだ。

 そして本誌エコノミスト今週号の特集記事でも論じているように、新型コロナによる絶望と混沌は、一つの深刻な経済問題をさらに悪化させる恐れがある。

 多くの低中所得国が、最も富める国々に追いつこうとする習性を失いつつあるのだ。

コロナ禍の人的被害と経済的損失

 本誌の超過死亡モデルによると、今回のパンデミックによる死者は800万~1600万人に上る。中央推計値は1400万人だ。

 途上国はこのウイルスに弱い。在宅勤務がまれなうえに、太った高齢の人が多い低中所得国は特にそうだ。

 中国を除いて計算すれば、豊かでない国々が世界全体の人口に占める割合は68%だが、新型コロナの死者の世界合計に占める割合は87%に達している。

 また、途上国の12歳以上の人々のうち、ワクチン接種を完了した人はわずか5%にとどまる。

 人的被害と並んで深刻なのが経済的損失だ。

 苦境から脱するための支出を行える余地が、新興国では比較的小さいためだ。新興国全体の国内総生産(GDP)の中期予想値は、新型コロナ拡大前のそれを5%下回っている。

 国民は怒っている。パンデミックの最中に街頭で抗議行動を行うのは危険だが、暴力的なデモは世界中で、2008年以降のどの時点よりも多く見られるようになっている。