(英エコノミスト誌 2021年7月24日号)

ユニコーンがどういうわけかウサギなみの速さで増殖し始めた

ベンチャーキャピタル・ブームは投資家にとってはリスクだが、投資家以外にとっては願ってもない贈り物だ。

 カウボーイ・ベンチャーズという投資会社を立ち上げたベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏が、10億ドル以上の価値を有する株式未公開のスタートアップ企業を「ユニコーン」と呼び始めたのは2013年のことだった。

 当時としてはまだ珍しい、神話に出てくるような事業体だったからだ。

 神秘的な特質を除けば、今日ではそのユニコーンが普通に見られるようになり、ますますありふれた存在になりつつある。

 新しい、そして大抵は安価な製品やサービスの数々から恩恵を享受する立場にある消費者は、この一角獣に乗って楽しむことを期待できる。

 だが、ユニコーンのダービーに賭けている投資家には、より慎重な手綱さばきが求められそうだ。

記録を次々塗り替えるユニコーン

 ユニコーンはまさにウサギ並みのペースで増殖している。

 8年前には世界全体で12社しかなかったが、今では750社を超えており、その企業価値評価額の合計は2兆4000億ドルに達している。

 また、2021年上半期にハイテク業界のスタートアップ企業が調達した資金の世界合計は3000億ドル近くで、2020年通期の実績にほとんど肩を並べている。

 調査会社CBインサイツによれば、この資金のおかげもあって今年4~6月期には136社ものユニコーンが新たに誕生し、これまでの四半期記録を塗り替えた。

 今年4~6月期の資金調達ラウンドで1億ドル超獲得したユニコーンの数は、前年同期比3倍の390社に上る。

 こうしたユニコーンのベビーブームは、古参のユニコーンを太らせることに役立っている。現在の評価額が100億ドル以上ある34社のうち、2020年の年初以降に新規の投資を受け入れなかったのは4社だけだ。