外食産業は今年になって反転しているが、相次ぐ緊急事態宣言もあり戻りは遅いままだ(写真:西村尚己/アフロ)

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 個人消費は、2020年4月から5月にかけて急激に減少した。新型コロナウイルスの感染第1波拡大に対応して人々外出を自粛したほか、1回目の緊急事態宣言発令により広範な業種で企業活動が制限されたためだ。消費総合指数を見ても、2020年5月の個人消費はコロナ禍前の平均的な水準を一気に15%程度下回っている。

 緊急事態宣言が解除された後、個人消費は急回復したが、2021年に入り伸び悩んでいる。年初は感染第3波と2回目の緊急事態宣言の影響、春頃は感染第4波と3回目の緊急事態宣言の影響が表れたためだ。今年の個人消費は、コロナ禍前を5%程度下回る水準で低迷している。

 見方を変えれば、昨年の個人消費は緊急事態宣言の発令・解除で大きく振れたが、今年の個人消費は宣言発令でもさほど落ち込まず、逆に宣言解除でもさほど回復せず、一進一退で低迷している。その背景としては、家計や企業が感染再拡大を懸念して一定の活動自粛を続けている影響があろう。また、需要・供給の構造が変化し、いわゆるニューノーマル(新常態)を迎えている可能性も考えられる。

 個人消費の現状を把握する上では、その内訳の動向を見る必要がある。以下、家計調査を用いて2人以上世帯における消費支出額の項目別、品目別の変化を確認してみよう。

 比較するのは5月の消費支出額だ。今年5月の消費支出額は、1回目の緊急事態宣言で急激に落ち込んだ昨年5月を2万9046円、率にして11.5%上回った。だが、コロナ禍前の2019年5月を1万9838円、率にして6.6%下回ったままだ。

 なお、2019年5月は10連休効果で例年よりも消費支出額が上振れた点に注意する必要がある。そこで、以下ではコロナ禍前の5月データとして2017年から2019年の3カ年平均を用いる。すると、今年5月の消費支出額は3カ年平均を7358円、率にして2.6%下回ったままだ。