米韓関係の改善を読み誤った菅首相(写真:つのだよしお/アフロ)

 菅首相と文在寅大統領による日韓首脳会談の調整が両国政府の間で始まった。7月23日の東京五輪開会式に参加するため文大統領が来日、その際に首脳会談を実施するという話である。

 日韓関係について、タカ派の意見を借りれば、歴史歪曲や竹島(日本領土)の侵略、旭日旗反対など文政権になって以降、一段と悪化した。米中貿易摩擦の下、日本が韓国をホワイト国から外すと判断したことに文政権が反発。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)脱退の可能性を打診するなど(脱退しなかった)経済関係も冷却化している。

 一言で言えば、文政権の4年間(任期は2021年5月まで)で、日韓関係は揉めに揉めた。

 この間、日本のメディアや専門家は親韓と嫌韓(表面的には嫌韓の方が多かったと思う)に分かれた。韓国関連の記事はよく読まれるため、文大統領を馬鹿にする記事や韓国を批判する記事がメディアにあふれた。中には、ウケ狙いとしか思えないようなフェイク記事や論考も少なくない。

 もっとも、こういった日本人の嫌韓志向とは裏腹に、日韓首脳会談の開催があっさりと決まりつつある。東京五輪を是が非でも成功させたい日本政府を見透かし、文大統領は五輪参加と首脳会談をセットで打診したのだ。

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳が五輪参加を表明していれば、簡単には実現しなかっただろう。日韓首脳会談が日本の二つ返事で決まった意味は韓国にとって大きい。これで、文大統領は対日関係で有終の美を飾ることができる。これが嫌韓派にとっての敗北だとすれば、「運は文に味方した」のである。