5月下旬からの米韓首脳会談と主要7カ国首脳会議(G7コーンウォール・サミット)への参加で、文在寅大統領にとっては任期終了を前に二つの目的を達成することができた。
一つは、民主主義国として米国と他の先進主要国に認めてもらったことであり、もう一つは完全な軍事独立に近づいたということである。特に、後者については、文在寅政権の幹部に聞いたところ、帰国した文大統領は「1905年の日韓保護条約で失った外交権の完全復活(≒完全独立)だ」と喜んだらしい。
一方、日本での評論を見ると、米韓首脳共同声明の中身のなさや、文政権のG7出席の「対価」が高いという批判的な論調が多かった。「対価」とはG7が共同声明で中国を名指しで批判した点、開かれたインド太平洋に関して台湾海峡に言及した点である。この点については韓国も賛同させられたため、対中関係が難しくなるというものだ。確かにそうかもしれない。
ただ、文政権にとっては、そのような問題を飲み込んででも、米韓首脳会談で韓国が開発する弾道ミサイルの射程を制限した米韓ミサイル指針の解除をバイデン政権に承認させた意味の方がはるかに大きい。朝鮮民族として戦後目指してきた完全独立に向けた歩みを、さらに一歩進めることができるからだ。
米韓首脳会談直前にミサイル制限の撤廃を手にした文大統領は、5月21日の米韓首脳共同記者会見で発表した。その御礼のためにG7に参加したと見た方が自然だ。