ガザ地区から発射されるロケット弾(写真:ロイター/アフロ)

 イスラエルは、5月10日に始まったハマスとの11日間戦争で、4000発のロケット攻撃を受けたにもかかわらず、死者はわずか12人だった(イスラエルは13人と発表)。その背景には、世界最高とも言われる迎撃性能を持つ迎撃ミサイル「アイアンドーム」の活躍があったことを知る読者も多いだろう。

 その後、5月26日付拙著「停戦合意したネタニヤフ、ハマスの双方が手に入れた政治的果実」で指摘した反ネタニヤフ陣営の組閣議論が再び本格化した。ただ、6月2日にリブリン大統領が組閣を依頼したのは、11日間戦争前日の5月5日に依頼した中道野党イェシュアティドを率いるラピド氏ではなく、11日戦争突入後、アラブ系政党の連立参加を拒絶した右派ヤミナ党首のベネット氏だった。ベネット氏は次期首相に、ラピド氏は連立の中枢である外務大臣となる予定だ。

 今回の組閣については、米国のブリンケン国務長官がイスラエル訪問時にラピド氏と会った後だけに、様々な憶測を呼んでいる。しかし、イスラエルからの情報を総合すると、右派のベネット氏が登場した背景には、世界の軍事関係者を惹きつけた迎撃ミサイルの性能とは裏腹の高いシステム運営コストも少なからず影響しているとの見方がある。