(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
モンゴルは13世紀から14世紀にかけてユーラシア大陸を席巻した。それから800年ほどの年月が流れたが、その驚異的な軍事力とその後の支配は、今でも恐怖の感情とともにユーラシア大陸に住む人々の心の奥底に残っている。それは知ることは現代社会を理解する上で役に立つ。
日本はユーラシア大陸の周辺に位置する島国だが、モンゴルの襲来は「元寇」と呼ばれて「神風」という言葉を生んだ。「元寇」と「神風」にまつわる記憶は、危機に見舞われた時に、神が日本を助けてくれるという思考につながっている。
あの戦争の末期に海軍は自爆攻撃隊を組織したが、その名称を「神風特別攻撃隊」とした。それは極めてインパクトのあるネーミングであった。もし「神風」という名称がなかったら、あれほどまでに特攻の悲劇が繰り返されることはなかったのではないだろうか。20世紀になっても日本人の心の中には元寇の記憶が残っていた。
中国全土を初めて征服した異民族
モンゴルの侵攻は中国にも大きな影響を与えた。中国はそれまでにも何度も北方に住む遊牧民に国土を荒らされてきた。女真族(満州族)が中国の北半分を占領したこともあったが、中国全土を征服したのはモンゴルが初めてだった。