ボアオ・アジアフォーラム2021年年次総会でスピーチする中国の習近平国家主席(2021年4月20日、写真:新華社/アフロ)

 日本と比べて中国の外交は老練で強(したた)かだ──よく聞く意見だが、本当にそうなのか? ベトナム・ビングループ主席経済顧問、Martial Research & Management Co. Ltd., チーフ・エコノミック・アドバイザーの川島博之氏(元東京大学大学院准教授)は、実は中国は外交が下手だと唱える。歴史をさかのぼると見えてくる極東アジア諸国の外交の欠陥とは? 川島氏の著書『極東アジアの地政学』(育鵬社)から一部抜粋・再編集してお届けする。(JBpress)

「尖閣への公船侵入」は悪手

 日本では孫子の兵法を生み出した国である中国は外交が上手だと思っている人が多いが、それは全くの間違いである。中国は外交が下手だ。

 日本ではよく次のような意見を聞く。

「中国は尖閣諸島の周辺に船舶を頻繁に侵入させて、尖閣諸島が自国のものであることをアピールし続けている。これはサラミ作戦と言って、少しずつ既成事実を積み重ねて自分のものにしてしまう作戦である。こんなことを行う中国は外交上手に決まっている。それに引き換え、尖閣諸島問題を大きな声で世界にアピールしない日本は外交が下手だ」

 しかし、よく考えてもらいたい。尖閣諸島の周辺水域に船舶を頻繁に侵入させることによって、中国は何を得たのであろうか。