中国の青海省・西寧とチベット自治区首府ラサ(拉薩)を結ぶ青蔵鉄道(青海チベット鉄道)(Photo by Jan Reurink,Wikimedia Commons

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

 5月26日、中国の習近平国家主席はネパールのビドヤ・デビ・バンダリ大統領と電話会談した。中国側が伝えたことは主に2つある。1つは、新型コロナウイルス感染症対策のためワクチン提供を含む緊急医療支援を提供したこと、もう1つは「一帯一路」構想の一環として進めるインフラ建設の“念押し”である。

 中国がネパールで進めるインフラ建設は、2020年以降、新型コロナの感染拡大で中断している。習主席がバンダリ大統領にわざわざ電話したのは、「ワクチンを提供したのだから、『一帯一路』のインフラ建設を忘れるな」というプレッシャーをかける目的があったとみられる。

鉄道で結ばれる北京とカトマンズ

「世界の屋根」と称されるヒマラヤ山脈は、無数の山脈が細かい皺(しわ)のように折り重なって連なっている。ユーラシアプレートとインド・オーストラリアプレートが衝突して隆起したのがこのヒマラヤ山脈であり、中国とネパールの国境に沿って分厚い壁を形成している。中国は今この障壁を突き破り交通路を築こうとしている。

 2006年7月、「青蔵(せいぞう)鉄道」(青海チベット鉄道)が開通した。中国青海省の省都・西寧と中国チベット自治区の首府ラサ間の全長約2000kmを結ぶ鉄道だ。運営するのは中国の青蔵鉄路公司である。