社長から学ぶ連載、今回はビック・ママの守井嘉朗氏に話を聞いた。同社は洋服のお直しの店を全国に約70店舗展開するが、様々な経緯を経て今は情報システム分野でも躍進を見せている。なかでも面白いのが、今後の雇用のあり方にも踏み込んだアプリ「Mind Weather(マインドウェザー)」を巡る話だ。(企業取材集団「IZUMO」)
経営問題の解決は「みんなで行う時代」
20世紀初頭、資本家は獰猛だった。雇用した人間に「代わりなどいくらでもいる」とばかりの労働条件を課し、労働者の怒りが、歴史に社会主義のうねりをもたらしもした。しかし現在、この「労働者vs.雇用者」という構図は古くなりつつある。
変化のきっかけは「少子化」と「ネットの普及」だ。今や社員やアルバイトに代わりはいない。企業が人材を雇用するには、リクルートやマイナビなどで募集する必要があり、必要経費は社員1名あたり数十万円~百数十万円にもなるという。またネットに「サービス残業を強要されていた」などと書かれれば、時には「炎上」にも発展し、企業に深いダメージを与える。
ビック・ママの守井嘉朗社長が話す。
「しかも、人材を大切にできない企業は今後の伸びも期待できません。人材を大切にしなければ、レベルの高いサービスを行うことなど不可能なのです。
例えば当社は洋服のお直しをしていますが、接客時に“ここに、ホツレがありますのでご一緒にお直しいかがですか?”などと話せる専門知識を持ったスタッフがいなければ、お客様の満足度も売り上げも向上しません。技術部門も、ミシンを使うのが上手で丁寧に仕事をしてくれるスタッフが1人抜ければ代わりはいません」
守井氏がつくったのは、そんな現状を変えられる「離職防止アプリ」だ。
「週に1度、LINEで社員に簡単なアンケートをとります。1問目が“今週、幸せでしたか?”というもので、社員には、ピーカン晴れ/晴れ曇り/曇り/雨/嵐の5段階で答えてもらいます。2問目は“あなたがもっと幸せになるために手助けできることはありますか?”というもの。3問目は何か問題があった場合の具体的な相談方法で、社長など幹部に匿名で意見を言うこともできます」