これが巨大都市ボーテンだ
展示場は、経済特区について説明する資料やスタッフを揃えた営業所のような施設だった。入口付近には、大きなパネルが掲げられており、さまざまな事柄が説明されていた。
そのうちの一枚が目に止まった。近代的な大都市とその横を走る鉄道の絵が描かれていたのだ。全く見覚えのない都市だった。でも、細部までよく見てみると、その大都市の絵の中に、目の前で開発が進む建物が描かれていることに気がつき驚愕した。その大都市こそが、ボーテンが目指す将来の姿だったのだ。しかも、その巨大さに驚かされていた目の前の建物よりも、もっと大きく近代的なビルが何十棟もそこには描かれていた。
他のパネルには開発内容を詳細に示したイメージ図もあった。そこには、さっきまで歩いていた丸坊主の山林に、産業が集まる街区が描かれており、今は存在しない川や湖さえも描かれている。また、山林の開拓はもっと拡張されるようで、そこには仏塔や古城、テーマパークまで建設される予定になっている。今は何もない場所につくられるように見えたボーテン駅だが、将来的には都市の一部となるエリアに建設されるのだ。
また、謎のゲートの正体は、ラオスの税関だった。つまり、海誠集団が「境内関外」と宣伝するように、ボーテン経済特区は「ラオスの国内だが税関の外」にあるという特殊な空間なのだ。それにより、特区内ではさまざまな税制優遇が受けられるとともに、ここで生産・組み立てされる産品は、「Made in Laos」として41カ国で最恵国待遇が享受できるとされる。
これこそが、巨大都市ボーテンの将来の姿なのだ。しかし、これは一体誰のための誰の町なのか。ボーテンの「境内関外」という特殊な性質、そして中国企業に90年にもわたってリースされているという現実が、その答えを悩ませる。