政府資料などはトリチウム量を物質量の単位と放射能、つまりベクレル単位と双方で書き混乱していますが、これは異なる専門委員の提出資料を文系のお役人が分からないまま丸写しにし、さらにそれを何も分からない政治家がハンドルして正体不明になっているものでしょう。
ですから、上ではすべて、コップ一杯の水に「何個のトリチウム」という話だけで整理しました。
結論は簡単で、十分薄めて放出すれば保険物理的には問題ないし、濃度が高いままだと問題がある。これ以外にはありません。
徳川家康も、小野小町も、聖徳太子も卑弥呼も例外ではなく、天然存在比程度のアイソトープとともに生涯を送りましたが、そんなことは知らず、特段健康に影響などもなかった。
同様で、処理水は「十分に希釈」されていたら、何の問題もないことになりますが・・・。それでも、いま問題になる、というのは何なのか?
漁協などが問う「風評被害」がマズいというわけですが、紙幅を超えてしまいました。
処理水海洋放出に伴う「風評被害」については別論とし、本稿では「コップ一杯の水に一滴ウイスキーを入れて飲んでも、酔う人、アル中になって健康被害が出る人などはいない」という、ごく基本的な事実を強調しておきます。
すでに自然界にあるのと同様、「天然存在比」程度まで希釈された「トリチウム水」であれば、何ら環境に影響を及ぼすことはありません。
また、極端に濃度の高いトリチウム水でメダカなどを飼えば、100%影響が出て当たり前です。
リスクを考えるうえで「1かゼロか」という短絡に走る人が、国民から政治家まで非常に多いですが、冷静な自然科学は化学反応のファクトを教えます。
「反応速度」は「濃度」が決定します。
健康に影響が出る「反応速度」に達することがなければ、少ない分子数の物質が、人間の生命に関わるアクションを起こすことはあり得ません。
そうした観点から、国際的な安全基準などが設定されています。
そうしたリスクと身体生命の安全の関わりを、「風評被害」と合わせて続稿で考えたいと思います。
(つづく)