東京大学正門(川嶋諭撮影)

「緊急事態宣言」は解除しながら自粛を呼びかけるなか、感染者数は確実に上昇して次のピークを迎えようとしている・・・。

 どこから見ても不整合で、諸外国からは「大丈夫か?」と問われる日本の新型コロナウイルス感染症対策ですが、私は実に整合した説明がつくように理解しています。

 前提は、徹底したウイルスリテラシーの欠如、科学的な合理思考とは無縁のオッサン集団が談合している状況にあります。

 私が長年、公私双方で懇切にご指導いただく、元東京大学医学部第一内科教授の黒川清先生は、この状況を「忖度男」集団が馴れ合ったまま、全員沈没と表現しておられました。

 身の回りのことしか見てないわけです。例外はあるけれど、大きく見て、高度成長期にそれで何とかなっていたのが、戦後日本の男たちの実情でしょう。

 今回のコロナ対策、日本で一元的で整合した対策が取れないことに関しては、少なくとも3つの分裂、統合失調が日本には観察されます。

1 基礎病理:新しいウイルスが席捲、変異種も続々出ているので基礎的な対策が必要

2 臨床治療:病院現場での新型感染症の受け入れと治療の好循環が成立していない

3 公衆衛生:基礎・臨床と独立した紙の上の医療行政的仕事がまともに機能しない

 という「3つのタコツボ」が各々問題を抱え、さらにそれら同士が分断されている。

 タコとタコとの連携が取れておらず、かつ各々のタコの足がこんがらかっている中、政治屋は人気取りとカネ勘定しか考えられず、野党は労働組合方式の攻撃で、与党失策の揚げ足を取ることしか考えていない。

 ここにも深刻な科学リテラシーの欠如があります。端的に言うと野党もまた「忖度男」の集団であって、まともな対案を出すことができない。

 自分直近の上司など、周囲数人の何となくの合意が大事、世間の風評が大事、あとは「カネ勘定」が命より大事・・・。

 まあ乱暴に、そんなふうに総括してみると、実にそのまんまの無策と混乱ぶりですので、日本は沈没するべくして沈没する行き先の察しが尽きます。

 しかし、さて、どうしてこういうことになってしまうのか?

 今回は、そのような「忖度男」人材ばかり作り出してしまう構造的原因と、その打開策を考えてみます。