ニューヨークでアジア系の市長が誕生する可能性が高まっている

「同化しない移民」というイメージ定着

 米国では毎日のようにアジア人を標的にしたヘイトクライム(嫌悪犯罪)が起こっている。

 米国生まれ米国育ちの日系米人も長期滞在や留学中の日本人も米国では「アジア人」。一時、慰安婦像を米国各地に設置して反日機運を煽ったコリアンも日本人と同じアジア人だ。

 そのアジア人が白人だけでなく、黒人やラティーノのヘイトクライムの対象になっている。

 被害件数は、2020年3月19日から2021年2月28日の1年間で3795件。

 年齢別では17歳未満が全体の12.6%、60歳以上は6.2%。男女別では女性が男性の2.3倍。出身国別では中国系42.2%、韓国系14.8%、ベトナム系8.5%、フィリピン系7.9%となっている。

(日系被害件数データは不明だが、数パーセント未満と推定される)

https://a1w.90d.myftpupload.com/wp-content/uploads/2021/03/210312-Stop-AAPI-Hate-National-Report-.pdf

 アジア系の人口は約2200万人と全体の6%弱。多くはないが米社会で最も急速に人口が増えている。2050年には米全人口の9%がアジア系になるとされている。

 米社会のアジア系に対する米国人の認識は、1940年代、50年代までは「同化しない移民・異邦人」とみなされ、「よそ者」扱いされる傾向にあった。

 太平洋戦争前、戦争中には日系人は敵国民扱いされ強制収容された。中国系(台湾系)もそのとばっちりを受けた。

 そうした気運は、今でも米社会の一部、特に白人非知識層・低教育層には根強く残っている。

 今回の対アジア系に対するヘイトクラムは、底辺にくすぶっていたアジア系に対する偏見が一気に噴出したと言える。

 長年、米西海岸で日系メディアの編集をしてきた日系ジャーナリストは、その背景についてこう指摘する。

「アジア系に対する偏見が表面化した背景には、ドナルド・トランプ前政権の白人至上主義的な政治スタンスがある。白人以外の人種に対する露骨な優越性が半ば容認され出したことだ」

「それに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスの発生源が中国・武漢であったことだ。未開で危険な病原菌は中国、アジアからやって来るといったイメージが米社会全体に広がった」

「第3の理由としては、習近平国家主席が率いる中国のあからさまな経済・軍事的脅威への警戒心が米国に住む中国系、アジア系米国人に向けられていることだ」

「知識層であれば、中国という国家と中国系米国人とを冷静に分別できるはずだが、非知識層にはそれができない。ましてや大統領だったトランプ氏がそれを煽ればなおさらのことだ」

「米国生まれ、米国育ちの自分のような日系米国人に、日本人の顔をしているというだけで、粗野な白人に会うと、『どこから来たのか』『なぜ英語が流暢なのか』と質問してくる」

「サンフランシスコから来たと答えると、『実際の郷里はどこか』とすら聞いてくる」

「今やアジア系というだけで、道を歩いていたフィリピン系の高齢の女性が突き飛ばされる。地下鉄に乗っていた韓国系の若い女性が白人の若者数人から『自分の国へさっさと帰れ』と罵られる。そんなことが日常茶飯事になっている」