そこにいた学生さんに話を聞くと、近くの家の猫だそうです。平日の昼間は家の人がいなくてさみしいのか、優しそうな人を見つけては駆け寄っていきます。

 この猫とここで出会う人が誰ともなく、フー(虎)と呼びはじめました。「本当の名前は飼い主から聞いたことがあるけれど、忘れてしまった。フーと呼ばれることを気に入っているみたいだからフーでいいよな」と、学生さんは猫に話しかけていました。

 旧市街南側のはずれに吉安渓という小川が流れています。突然、小川の方から顔の大きな猫が現れ、日頃の鬱憤を晴らすかのように、野太い声で鳴き続けていました。

 花蓮では、高い場所から人に視線を送る猫にたくさん遭遇しました。「気がついてほしい」ということなのでしょうか。

 廃屋の窓から顔を出していた猫の視線は、「気づけ!」といわんばかりの強力なものでした。カメラのレンズを向けると、「よし!」と小さくうなずきました。このあと、目の前の壁にジャンプしてから、体の向きを変え屋根の上へ。そのアクロバティックな動きを見せたかったのかもしれません。