文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の政策は、内政、経済、外交、北朝鮮政策に至るまでことごとく失敗の連続であった。

 内政的には、就任式の演説で訴えた「国内融和」とは真逆の「積弊の清算」を強引に進め、国内の対立を激化させた。

 経済的には、「所得主導経済成長政策」を掲げて最低賃金の引き上げを、何の対策もなく急激にすすめたため、中小企業・自営業者の大量倒産を招き、失業率を上昇させ、かえって経済格差を広げてしまった。またもともと価格が高騰していた不動産政策でも失敗し、不動産価格を一層暴騰させ、国民が新規に住宅を購入することを困難にした。

 外交的には日本ばかりではなく、米国からも同盟国としての信頼を失った。無分別に寄り添う姿勢を見せた北朝鮮からも、米朝の仲介者として失格の烙印を押された。

失政追及するメディアを目の敵に

 これだけの失政を重ねた政権は、韓国の歴史を振り返っても存在しなかった。だが、文政権は決してそれらの失敗を認めることはなかった。

 文在寅政権は失政を隠すため、官僚機構に事実歪曲を強要し、統計数値をごまかしてきた。北朝鮮に対する歩み寄り姿勢は、韓国の安全保障を脅かす水準にまでエスカレートした。さらに監査機構、検察によって政権の実体が暴かれないよう監査、捜査を妨害してきた。そして裁判所には政権に有利な判決を導き出すような人事を行うなどして批判を抑え込んできた。

 しかし現実を直視すれば、文在寅大統領の政策は失敗の連続で、もはや八方塞がりであり、改善の糸口も見当たらない。当然ながらそれに伴って文在寅政権に対する主要メディアの反発や批判が高まっており、最近では言論によって政権の失政や不正腐敗が暴かれることが多くなった。その結果、政権への支持率は40%を下回るようになった。

 この状況を打破するため、政府与党が次に打とうとしている手が言論への締め付け強化である。