市場は弱肉強食が当然か?
出発点の不一致はあるが、そうはいっても、石川氏は「市場設計の修正」が課題であることは否定しない。
他方、非公開で意見を伝えてきた人たちの中には、もっと極端で、「市場とはこんなもの」として設計修正の必要性すら否定する人もいた。
これは私の市場経済の理解とは異なる。
市場は、ルールのない乱闘場ではない。もしルールのない状態なら、例えば有力事業者がカルテルを結び、消費者から暴利をむさぼることも起きる。それでは不公正で社会の利益を害するから、独禁法などの競争ルールが設けられている。
電力市場の場合、競争ルール(市場設計)の不備があった。これは正すべきことであり、「市場はこんなもの」ではない。
ちなみに、政府の成長戦略会議で2月から「競争政策」に関する議論がスタートした。竹中平蔵・慶応大学名誉教授が会議で提出した資料では、検討課題候補のひとつとして、こんな項目があげられている。
「発電市場は大手電力が 8 割を占め、発電と小売は同一会社で運営されている。小売部門のみの新電力が圧倒的に不利な状況ではないか?」
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/wgkaisai/kyousou_dai1/siryou5.pdf)
竹中氏はよく「新自由主義・市場原理主義の権化」のごとく扱われるが、ルールのない完全弱肉強食の市場経済は主張していない。むしろ競争ルールの必要性を唱えている。
ところが、電力に関してはなぜか、「市場=完全弱肉強食」と唱える「超・市場原理主義」が広がっているようだが、謎の理論というほかない。