反政府デモで拘束された若者(写真:ロイター/アフロ)

(土田陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 1991年12月8日、世界初の社会主義国家であったソビエト連邦(ソ連)が崩壊した。今年はそれから30年のメモリアルイヤーに当たる。かつてソ連は、いわゆる東側陣営の盟主として、米国が率いる西側陣営と国際秩序を二分した大国であった。しかし30年の歳月を経て、その名前はすでに過去の遺物と化した感が強い。

 ソ連の事実上の後継国家はロシアである。ソ連崩壊以降、ロシアの最高指導者は初代大統領の故ボリス・エリツィン氏(1931-2007年)と現大統領のウラジーミル・プーチン氏(1952年-)の事実上2名しか存在しない。特にプーチン氏は、最初に大統領に就任した2000年以降、立場を変えながらも一貫して権力の座にある。

 そのプーチン大統領に対する風当たりが内外で強まっている。きっかけは1月23日に行われた、反体制派の指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の呼びかけによるロシア各地での大規模な反政府デモだった。デモは31日にも行われ、当局は首都モスクワの中心部を封鎖するといった強硬手段に出るとともに、ロシア全土で4000人以上を拘束した。

禁固3年6カ月の実刑が決まった反体制指導者のナワリヌイ氏(写真:ロイター/アフロ)

 ナワリヌイ氏は2020年8月、ロシア国内で毒殺未遂に遭った。その後ドイツで治療を受け、今年1月に帰国したが、その際に執行期間中の出頭義務を怠ったとして当局に拘束・拘留されていた。裁判所は2月2日、ナワリヌイ氏を実刑に処すると判断、デモを呼びかけたことに対する事実上の懲罰措置であることは明らかであった。

 これに支持者が反発したほか、欧米各国も相次いでロシア政府に対して強い非難声明を出した。2014年のクリミア危機以降、ロシアと欧米の関係は緊張している。ある意味では親ロ的な側面があったトランプ前大統領が米国で退場したこともあり、ナワリヌイ氏の処遇をきっかけに欧米とロシアの対立は足元で一段と深まっている。