昨年10月に観光庁は、カジノを含めた統合型リゾート(IR)誘致を希望する自治体からの申請を9カ月間延長することを決めた。新型コロナウイルス感染拡大やIRをめぐる汚職事件の摘発などが延期の理由と言われている。
ただ、汚職のほうはともなく、世界的なコロナ禍はリゾートやカジノといったエンターテイメント産業の経営環境を根本から揺さぶっている。日本でも外国人旅行客は激減している。近い将来、日本にカジノが誕生しても、当初見込まれていたような訪問客数になるかどうかも怪しい。そのため、「もはやIR計画自体が暗礁に乗り上げた」との報道もある。
だが自治体やカジノ業者、そして建設業者は巨万の利益を夢見て、現在も活発に動き続けている。
毎年「2兆円」とされたカジノの経済効果だったが・・・
統合型リゾート整備推進法案、通称「カジノ法案」は2016年12月に成立。その後、設置区域は上限3カ所と定められた。
IR誘致が成功すれば、億どころか、兆単位のカネが動く。大和総研が2017年に発表した試算によれば、その経済効果は日本全体でホテル等の建設効果が5.1兆円、カジノ運営が毎年2兆円に上るという。
昨年末、自民党の重鎮とスーパーゼネコンの最高幹部が都内の飲食店で席を共にしていた。話題は菅政権の行く末から東京五輪開催の可否、そしてIR候補地の選定だった。
スーパーゼネコンの幹部がIRについてこう切り出した。
「まさか、コロナでIRが中止になることはありませんよね。本命は横浜と大阪。残りの1カ所はどこが有力でしょうか」
スーパーゼネコン幹部の問いに対して、自民党の大物政治家は思わせぶりにこう返答したという。
「東京五輪が中止になっても、IRが頓挫することはないでしょう。選定場所はカジノ管理委員会が選定することですから、部外者の私は何もわかりません。ですが、候補地選定は選挙と同じ、本命が当選する保証はありません」
本命が当選する保証はない――。もちろん原則論で言えばその通りなのだが、その言葉の意味は決して軽くはない。