そんななか、渡辺氏はどのような未来を予測しているのか。
企業はエンタテイナーやヒーローになれる
「我々はありとあらゆるコンテンツを見て研究と実験を重ね、未来の広告の鍵は“人格”だと考えるようになりました。コンテンツを見る方のほとんどは、笑いたい、感動したい、勇気がほしいなど、何らかの感情の動きがほしくてこれを見ようとします」
現在はテレビCMや雑誌の広告だけでなく、YouTubeなど、消費者とコミュニケーションがとれる媒体がいろいろある。もし消費者が見てくれるなら、極端な話、テレビ番組のような商品開発のドキュメンタリーをつくったっていいし、自社商品が登場する映画をつくり、そこに商品の詳しい情報を加えたり、動画で感動してもらいつつ技術的優位点をきっちり伝えてもいい。
さらに、消費者も変わった。ネット以前なら、応援の方法は「買う」くらいしかなかった。しかし現在は、SNSで「この会社すごいよ」「これおすすめだよ」「この動画面白いよ」と発信し、リンクを送りあえる。
そして、新しいフォーマットのコンテンツを創るためには“人格”が必要なのだ。今までの「法人格」は特定の人物の顔が見えなかった。しかしこれだと「企業が利益のためにつくっている何か」というイメージがあるのだ。渡辺氏が話す。
「情報を広く伝えるならテレビや雑誌の広告は有効です。一方で、商品に愛着を持ってもらい、ファンになってもらい、SNSで拡散してもらうには、エンタテインメントとして発信し、ここに企業・ブランド・商品の世界観や考え方やキャラクターをのせていったほうがいいのです」
例えば、定番商品「チョコボール」には「キョロちゃん」というキャラクターがいる。ならば例えば、キョロちゃんという“人格”にしゃべらせ、動画で動かし、発信させ、誰かとコラボさせたりして、人気になったらぬいぐるみを販売し、とできるはずだ。
「キョロちゃんは歴史も伝統もあるキャラなので、いま改めて動かす必要はないかもしれませんが、僕が言いたいのはそういうことです。何もキョロちゃんのように可愛いだけでなく、例えば面白いとか、かっこいいとか、困った場面を救ってくれるヒーローとか、様々なキャラクターがいていいと思います。そして、企業から消費者へのコミュニケーションをエンタテインメントにしていくと、消費者は能動的に楽しんでくださるのです」