昨年10月、文在寅(ムン・ジェイン)政権の「検察改革」のシンボルであった曺国前法務部長官(法相)が検察によって失脚し、文在寅政権は大きく揺れた。曺国前長官の不正に対し検察が電光石火の捜査を行い、曺前長官はもとより、その妻や弟、甥までが起訴されたことで、政権支持率が一気に崩壊したからだ。
当時、韓国国民やメディアは、曺前長官が数々の不正容疑によって自らの足を引っ張ったものと受け止めていたが、文在寅政権は違っていた。事件を、検察改革を妨害するための尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長の「無理な捜査」と決めつけたのだ。
その後、「曺国事件」で文在寅政権と検察とは戻れない川を渡ってしまい、文在寅政権は「検察改革」や「公捜処新設」に政権の運命を委ねることになった。ここから大統領vs.検事総長の、過去に類を見ないほどの激しいバトルが始まった。
大統領の「同志」を市長選で勝たせるため青瓦台が選挙に介入
検察が曺国氏の大統領府民情首席時代の不正疑惑を捜査する過程で、「蔚山(ウルサン)市長選挙介入事件」が浮かび上がった。2018年6月の蔚山市長選挙では文在寅大統領が「同志」と親しみを込めて呼んでいる宋哲鎬(ソン・チョルホ)候補が当選したが、この当選に大統領府民情首席室が介入したという疑惑だ。新たな疑惑の噴出は、文政権にとってはまさに弱り目に祟り目だった。