おそらく、これからますます長寿社会になっていく中で、オートファジーへの関心はどんどん高まるはずです。オートファジーがどのようなしくみであり、どういう役割を担っているかを学ぶことは、現段階での老化と寿命についての最先端の情報を知ることになります。

 オートファジーは細胞の中のとても小さな現象ですが、とてつもなく大きな可能性を秘めています。

細胞の中のものを分解する現象

 オートファジーって何ですかと聞かれたら、「細胞の中の物を回収して、分解してリサイクルする現象」のことですと答えます。

 オートファジーは、細胞の恒常性を保つ働きをするものです。私たちは、オートファジーのおかげで、昨日も今日も変わらない体で過ごせています。

 オートファジーには、大きく3つ役割があります。
①飢餓状態になったときに、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
②細胞の新陳代謝を行う
③細胞内の有害物を除去する

 いちばん最初に見つかったのが①ですが、人間の病気を考える上では②と③が重要です。

 オートファジーの3つめの役割である、
③細胞内の有害物を除去する
は健康のためにとても大切です。もし細胞内に有害なものが現れると、それを積極的に隔離して壊します。

 有害物はさまざまです。まずわかりやすいところでは病原体があります。病気をおこすので明らかに有害ですね。細胞の中に侵入してきた病原体をオートファジーが取り除きます。

 この役割は①、②とは大きく異なります。飢餓時の栄養補給も新陳代謝も、包み込んで壊すのは自分自身の成分です。だからオートファジー、日本語では自食作用と名づけられたのです。しかし病原体は自分ではありません。外から来た敵です。それを壊すのは、栄養にするためではなく細胞を守るためです。